🫁 嚥下(えんげ)のメカニズム
嚥下とは食物・水分を口から食道へ安全に送り込む過程です。5つのステージに分けられます。
| ステージ | 名称 | 内容 | 障害時の問題 |
|---|---|---|---|
| 1 | 先行期 | 食物を見て認識し、食べる準備をする | 認知症で食物と認識できない |
| 2 | 準備期 | 口腔内で咀嚼し食塊を形成する | 歯・咀嚼筋の問題で食塊形成困難 |
| 3 | 口腔期 | 舌で食塊を咽頭へ送り込む | 舌機能低下で食物が口に残る |
| 4 | 咽頭期 | 嚥下反射で食塊が食道へ。気管は閉鎖される | 嚥下反射遅延→誤嚥の最大リスク期 |
| 5 | 食道期 | 蠕動運動で胃へ運ばれる | 食道狭窄・逆流 |
🔴 誤嚥(ごえん): 食物・水分・唾液が気管に入ること。高齢者の肺炎の約70%が誤嚥性肺炎。
🪑 誤嚥予防のための体位・姿勢
| 姿勢 | 詳細 | 理由 |
|---|---|---|
| 座位90° | 可能な限り椅子またはベッドを90°に起こす | 重力で食物が食道方向へ |
| 頭部前傾(あごを引く) | あごを軽く引いた姿勢 | 気管の入口が狭まり誤嚥しにくい |
| 体幹の安定 | クッション・背もたれで体幹を支える | 安定した姿勢が嚥下筋力を最大化 |
| 足底接地 | 足の裏が床や台につくように | 体幹安定・腹圧の安定 |
| 30°リクライニング | 座位困難な場合は30〜60°ファウラー位 | 重力を利用しつつ疲労を最小化 |
⚠️ 仰臥位(完全に横になった状態)での食事は誤嚥リスクが最大。NG。
🥣 嚥下機能に合わせた食形態
| 食形態 | 特徴 | 適応 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 普通食 | 通常の食事 | 嚥下機能正常 | — |
| きざみ食 | 5mm程度に細かく刻む | 咀嚼力低下(嚥下正常) | バラバラになり誤嚥リスクあり。嚥下障害には使わない |
| ソフト食 | 軟らかく調理。形は残す | 咀嚼力・嚥下力中等度低下 | 見た目を保つことで食欲維持 |
| ミキサー食 | ミキサーにかけてペースト状 | 咀嚼ほぼ不可 | 水分と混ざりやすく誤嚥リスク残存 |
| とろみ食 | とろみ剤で液体をゲル状に | 嚥下反射遅延・誤嚥リスク高 | とろみの濃度管理が重要。STと連携して決定 |
| 経腸栄養 | チューブで胃・腸へ直接 | 経口摂取不可 | 医療的ケアの範囲。医師・看護師の指示必要 |
👁️ 食事中の観察ポイント
🔍 むせ・咳嗽
食事中または直後のむせは誤嚥のサイン。「むせないから安全」は誤り。不顕性誤嚥(むせなくても誤嚥する)がある。
🔍 声の変化
食後に「ガラガラ声(wet voice)」が出る場合は咽頭に食物が残っている誤嚥のサイン。
🔍 食事時間の延長
食事に30分以上かかるようになった場合は疲労・嚥下機能低下のサイン。STに相談。
🔍 口腔内残留
食後に口の中に食物が残っている場合は送り込み機能の低下。口腔ケアで誤嚥性肺炎予防。
🔍 食欲低下
「食べるのが怖い」「むせるから食べたくない」という訴えは嚥下障害の心理的サイン。
🔍 発熱の繰り返し
食後の発熱・微熱が続く場合は不顕性誤嚥による誤嚥性肺炎の疑い。すぐ看護師に報告。
✅ 食事介助の手順
- 環境準備: 食堂または居室を整える。BGMは会話の妨げにならない程度に
- 体位確認: 座位を確保。頭部前傾。足底接地。体幹安定のためクッション使用
- 食事内容の確認: アレルギー・食形態・特別食の確認。本日のメニューを説明
- 口腔内の確認: 義歯が正しく入っているか。口腔内残留物はないか
- 一口量の調整: ティースプーン1〜2杯程度。「食べたら飲み込んだことを確認してから次の一口」
- 速度の調整: 急がせない。本人のペースで。「ゆっくりどうぞ」
- 誤嚥サイン観察: むせ・湿性嗄声・顔色変化を常時確認
- 食後口腔ケア: 食後15〜30分は座位を保ち、その後口腔ケア
💬 Dialog 食事介助と嚥下ケア
🥣 Dialog 1 — 食事形態の変更提案
介護士
看護師さん、田中様が最近食事中に何度もむせています。今日は食後に少しガラガラ声になっていました。
Suster, Bu Tanaka belakangan sering tersedak saat makan. Hari ini setelah makan suaranya sedikit serak basah.
看護師
それは気になりますね。STに嚥下評価を依頼しましょう。それまでの間、食形態をソフト食に変えて、とろみをつけた水分に変更しましょうか。
Itu perlu diperhatikan. Kami minta ST untuk evaluasi menelan. Sementara itu, ubah ke makanan lunak dan air dengan pengental.
介護士
わかりました。体位は頭部前傾の座位90°を継続しますね。食後は口腔ケアを徹底します。
Mengerti. Posisi tetap duduk 90° kepala menunduk. Setelah makan perawatan mulut akan lebih ketat.
🍽️ Dialog 2 — 食事介助の声かけ実践
介護士
山田さん、今日のお昼ごはんですよ。鮭の照り焼きと豆腐のお味噌汁です。好きなものはありますか?
Pak Yamada, ini makan siang. Ada salmon teriyaki dan sup tahu miso. Ada yang disukai?
山田さん
鮭は好きです。でも最近喉に引っかかる感じがして…
Salmon suka. Tapi belakangan terasa nyangkut di tenggorokan...
介護士
そうですか。今日は少しとろみをつけてお出しします。ゆっくり一口ずつ食べましょうね。飲み込んだのを確認してから次を食べましょう。
Begitu. Hari ini ditambahkan sedikit pengental. Makan pelan-pelan satu suap ya. Pastikan sudah ditelan sebelum suap berikutnya.
🚨 Dialog 3 — 誤嚥発生時の対応
介護士
(田中様が食事中に突然激しく咳き込む)田中さん!大丈夫ですか?背中を叩きますね。
(Bu Tanaka tiba-tiba batuk keras saat makan) Bu Tanaka! Anda baik-baik saja? Saya tepuk punggungnya ya.
介護士
(咳が止まらない場合)食事を止めて、前傾座位のまま口の中を確認します。ナースコールを押します!
(Jika batuk tidak berhenti) Hentikan makan, tetap dalam posisi condong ke depan, periksa mulutnya. Saya tekan bel perawat!